後継ぎがいない?自動車整備工場の事業承継、M&Aのすべてをプロが解説します。

こんにちは、株式会社Blue Finback代表のチェンです。

 

 

以前、弊社のお客さまである地方の整備工場にお伺いした時に、
社長さんにこんな話をきいたんですね。

 

「俺はもう70近いし、後継ぎもいないから
最近もう廃業しようなんて考えてるよ」

 

従業員も何十人も抱えているにも関わらず、です。

 

 

 

で、このような状況にある整備工場は、
全国でも多いのかなと。

 

 

そこで、今回は、

自動車整備工場が事業承継をする際の流れや注意点

ということで、事業承継をするのに
必要な情報を全て解説していきますね。

 

(以下「整備工場」という表現には、「鈑金工場」も含みます。)

 

 

 

目次

自動車整備工場の廃業状況

 

全国でも、廃業している自動車整備工場は年々増えています。

 

以下は少し古いデータになりますが、
2011年から2017年まで年々廃業する自動車整備工場は増えていっています。

 

 

この流れは、おそらく今後も変わらないでしょう。

 

しかし、実は後継ぎがいなくても、
廃業しない方がいい場合が多々あります。

 

 

廃業のデメリット

 

なぜなら、実は廃業は

「はい、じゃあ明日からやめます」

といってすぐにできるものではないからです。

 

 

廃業するときには、
いろんなことに気をつけないといけないのです。

 

 

まず、会社の資産よりも債務の方が多かった場合(債務超過)、
廃業ではなく倒産となり、
社長さん本人も自己破産しなければならないケースも多々あります。

 

なので、細心の注意が必要です。

具体的には、廃業の際に気をつけるポイントは以下です。

 

廃業の際のポイント
  1. 債務(銀行からの借入)を全部返せるか
  2. 返せない場合、連帯保証人として社長の名前があるか(ある場合、社長が個人的に返済しなければならなくなります)
  3. 従業員の次の職があるか
  4. 長年の顧客はどうするか
  5. 廃業にかかる必要が払えるか(設備の処分、施設の原状回復、従業員の退職金など。数百万円必要になることも)

 

以上のように、廃業にはかなりのデメリットがあります。

 

 

特に1番の債務の返済が問題になることが多く、
廃業(倒産)すると社長も破産するために
廃業したいのにしぶしぶ続けている方も少なくありません。

 

 

後継ぎがいない場合はどうすればいいのか?

 

では、後継ぎもいないし、
廃業もできない。

 

そんなときはどうすればいいのか?

 

 

答えは、

M&Aによる事業承継

となります。

 

 

つまり、

会社を売る

ということです。

 

会社を売ることにより、
第三者にあなたの会社を引き継ぐことができ、
さらにあなたは売却益を手にすることができるのです。

 

さらに、債務がある場合も、
債務から解放されることができます。

 

 

 

でも、残念ながら整備工場の経営者のなかには、
M&Aの知識を正しく持っていないばかりに、
廃業を選んでしまう人があとを絶えません。

 

 

事業承継やM&Aとは?

 

M&Aや事業承継は聞いたことはあるけど正確には知らない、
という方も多いので、ここで簡単におさらいしておきます。

 

 

まず、事業承継とは、

事業承継

事業を他に誰かに引き継ぐこと

 

です。

 

 

つまり、息子でも従業員でも第三者でも、
他に誰かに経営を引き継ぐことが事業承継となります。

 

 

次に、M&Aですが、

M&A

Mergers(合併)and Acquisitions(買収)』の略で、2つ以上の会社が一つになったり(合併)、ある会社が他の会社を買う(買収)こと

 

となります。

 

 

つまり、事業承継の一つの手段として、M&Aがあるわけです。

 

自分の知り合いのなかに事業承継できる人がいない場合、
M&Aを使って第三者に承継するイメージですね。

 

 

 

そして実は、M&Aといっても、
いろいろな種類があります。

 

(日本M&Aセンターより)

 

 

このうちのどの方法でM&Aを行うかは、
売る側と買う側の状況によって変わってきます。

 

自動車整備工場を売る、という場合は、
「株式取得」(売る側からしたら株式譲渡)
が一般的になりますね。

 

 

自動車整備工場がM&Aするメリット

 

では、自動車整備工場をM&Aで売却するメリットとはなんでしょうか?

 

僕は、大きく以下の5つがあると考えています。

 

 

M&Aで売却するメリット
  1. 後継者
  2. 会社の存続
  3. 整備士不足
  4. 債務の回避
  5. 売却益

 

1.後継者

まず、自動車整備工場がM&Aする理由のほとんどが
「後継者が見つからない」
だと思いますが、それが解消できます。

 

なぜなら、売却先の会社が後継者を立ててくれる場合がほとんどだからです。

 

 

2.会社の存続

次に、廃業や倒産をしなくてよくなり、
あなたやあなたの先代が一生懸命築いてきた
会社を未来に残し続けることができます。

 

 

先代や自分が創業した会社がなくなることを望む人はいません。

 

ずっと一緒にやってきた従業員や
長年付き合ってきた顧客にも
迷惑をかけることになります。

 

自分の会社が、
自分がやめてからも残り続けるのは
それだけで嬉しいものなのです。

 

 

3.整備士不足

同業でM&Aをした場合、
買い手企業に整備士がいれば、
整備士不足を解消できる可能性があります。

 

整備士は数がどんどん減っており、
明らかに全国的に人材不足になっているので
整備士が確保できる点は大きいです。

 

4.債務の回避

債務を肩代わりしてほしいために
M&Aをする社長さんも少なくありません。

 

これは、会社にある預金が銀行からの借入れよりも大きい時に起こる問題です。

 

多くの場合、銀行からの融資には
連帯保証人として社長が入っていますから、
会社が銀行に返済できなかった場合、
社長が個人の資産で返済をしなければなりません。

 

額が大きい場合、会社の倒産と同時に
社長も破産するケースも多いです。

 

 

しかし、M&Aをすれば、
社長が連帯保証人から外れることができます。

 

つまり、買い手に借金を肩代わりしてもらえるのです。

 

 

実際に
「自分が連帯保証人から外れること」
を条件にM&A先を探す社長も多いですね。

 

 

5.売却益

そして、当たり前ですが、
会社を”売る”ということは、
お金がもらえるということです。

 

 

自動車整備工場は、平均して
2000万円-1億円で売れるといわれています。

(一般的な従業員5-15人程度の地方の整備工場の場合)

 

かなり大きい額であり、
M&Aの本来の目的とも言えます。

 

 

M&Aの手順

 

では、M&Aは具体的にどのようにすすめていけばいいのか?

 

手順を説明します。

 

具体的には、以下のような流れになります。

 

M&Aの手順
  1. 専門家に問い合わせ・相談
  2. 専門家とアドバイザリー契約を結ぶ
  3. 各種資料の提出
  4. 企業評価の実施
  5. 相手企業の選定
  6. 相手企業との面談
  7. 相手企業との基本合意
  8. デューデリジェンス
  9. 最終合意
  10. M&A実施

 

 

1.専門家に問い合わせ・相談

2.専門家とアドバイザリー契約を結ぶ

M&Aは、財務的・法務的な注意点が山ほどあるため、
個人で合意まで達することは基本的に不可能です。

そのため、M&Aの専門家や仲介業者への相談が必須となります。

 

 

3.各種資料の提出

4.企業評価の実施

次に、M&Aの専門家にあなたの会社の書類を提出します。

 

M&Aの専門家があなたの会社の決算などをみて、

  • どのくらいで売れそうか?
  • どこを改善すればより高く売れそうか?
  • 売る前に改善した方が良い点はどこか?
  • どこの会社とシナジーがうまれそうか?

などの評価をしてもらいます。

 

5.相手企業の選定

企業評価をもとに、M&Aの専門家が買い手企業を選定し、募集をかけます。

 

6.相手企業との面談

買い手の候補が出てきたら、面談をしてお互いの要望を交換し、さらなる検討をします。

 

7.相手企業との基本合意

両者がある程度合意したら、「基本合意」をします。

 

8.デューデリジェンス

デューデリジェンスとは、
会社の価値やリスクなどを調査することです。

 

何円で売買するのが妥当かを具体的に決定します。

 

9.最終合意

価格が決定し、両者が合意すれば、「最終合意」となります。

 

10.M&A実施

実際に株式の引き渡しなどを行い、M&Aを完了させます。

 

 

誰が自動車整備工場を買うの?

 

では、誰が自動車整備工場を買うのか?

 

基本的に買い手はM&Aの専門家や仲介業者が探してきますが、
誰に売るかはとても大事だと思うので、紹介します。

 

過去の事例をみると、
自動車整備業者のM&Aは
以下の事業者が買い手になっていることが多いです。

 

自動車整備工場の買い手
  • SS(ガソリンスタンド)事業者
  • 中古車販売
  • カー用品、タイヤ小売チェーン
  • 運送会社(売り手が大型車両の整備もやっている場合)
  • その他大手の総合自動車会社
  • 独立したい整備士

 

 

価格の相場

 

では、彼らに対して何円で売れるのか?

 

実は、M&Aにはしっかりと価格の相場感のわかる式があるので、紹介します。

 

 

もっとも簡単でわかりやすいので「年買法」で、
以下の式で計算できます。

 

企業価値の算定方法(目安)

企業価値(売却価格)=純資産+営業利益3−5年分

 

 

純資産とは、会社全体の資産から負債を除いたものです。

 

決算書のなかの貸借対照表でいうと、
一番右下の数字ですね。

 

それに、営業利益の3−5年分を足したのは
会社の適正価格といわれています。

 

 

たとえば、純資産が2,000万円で、
営業利益が300万円程度出ているのであれば、

2,000万円 + 300万円 × 3~5年 = 2,900 – 3,500 万円

となります。

 

 

もちろん、これだけで決まるだけではありません。

 

例えば

  • 特許や資格などの専門性の高いものがある
  • 従業員が優秀
  • 買い手とのシナジーが大きい

などの場合、価格が適正価格よりも大きく上がったりします。

 

 

だから、純資産がマイナス(債務超過)
であっても売れることがたくさんあります。

 

 

純資産がマイナスでも、
買い手企業とのシナジーにより黒字が生まれ、
買い手企業が数年でプラスに持っていくことも可能だからです。

 

 

自動車整備業の売却価格を高くするポイント

 

どうせ売るなら、できるだけ高く売りたいですよね。

 

ここでは、自動車整備工場をできるだけ高く売る方法をご紹介します。

 

自動車整備工場の売却価格を左右するポイントには
以下のようなものがあります。

 

価格を高くするポイント
  1. 工場が自己所有
  2. 優良顧客・法人顧客が多い
  3. 立地
  4. 地域での認知度
  5. 指定工場である
  6. 優秀な人材
  7. エーミングや水性塗装など新しい技術に対応している

 

これらを満たせれば、思ったより高く売れる可能性があります。

 

 

M&A・事業承継を成功させるポイント

 

では、M&Aをしっかり最後まで成功させるには
どのようなポイントに気をつければいいか?

 

せっかく売ろうという決断をしても、
なかなか買い手が決まらなかったり、
思った価格で売れなかったら意味がありません。

 

しっかりと準備をして、
希望する価格や条件で売れるようにしておきましょう。

 

 

M&A・事業承継を成功させるポイント
  1. 強みの把握
  2. 入念な準備
  3. 譲れないポイントの明確化
  4. 専門家に相談

 

1.強みの把握

あなたの会社に興味をもつ買い手を増やしたり、
売却価格を上げたりするには、
あなたの会社の強みを明確にすることが最も大切になります。

 

「あ、こんな会社なら買いたい!」

と思わず思ってもらえるような強みはなんなのか?

 

しっかりと整理して、専門家や仲介業者に伝えましょう。

 

 

2.入念な準備

強みを把握した上で、
その価値を実際に目で見てわかるようにしておくことが大事です。

 

例えば、

  1. 技術の明文化
  2. 顧客リストの整理

などです。

 

特に、自動車整備業界では
職人気質が多いと言われているので、

「あの人しかこの作業ができない」

「マニュアルなどが全くない」

なんてこともざらにあります。

 

これらをしっかりマニュアル化することによって、
あなたの会社の価値が外部からもわかりやすくなり、
評価されてより高く売れやすくなります。

 

 

3.譲れないポイントの明確化

会社を売る際に譲れないポイントはありますでしょうか?

 

「従業員は全員そのまま採用を継続してほしい」

「今の顧客とはそのまま関係を維持してほしい」

「分割払いではなく一括払いしてほしい」

 

などあれば、しっかりとまとめて専門家やM&A業者に提示しておきましょう。

 

4.専門家に相談

最後になりますが、
結局、専門家に相談することが一番大事になります。

 

 

M&Aは多く方は初めてだと思います。

 

しかし、財務面や法務面など、
M&Aにはさまざまな特殊な観点があり、
素人にはわからないことがたくさんあります。

 

そこで、少しでも悩みがあれば、
M&Aに詳しい専門家に相談することが一番大事になってきます。

 

 

 

専門家の委託費には補助金を使える

 

「M&Aの専門家や仲介業者って、
成功報酬などが高いんでしょ?」

と思うかもしれません。

 

 

しかし、知らない人も多いですが、
実はこれらのM&Aの委託費には補助金が使えて、
費用の2/3を国が負担してくれます。

 

つまり、実際にかかった費用の
1/3程度の費用で委託できるんです。

 

 

 

弊社では、自動車整備業界に向けて、
M&A仲介サービスだけではなく、
補助金の申請も行っております。

 

そのため、弊社に委託される場合、
委託費の補助金を受けるところもサポートできますので、
成功報酬などの委託費を大幅に引き下げることが可能です。

 

 

まとめ

 

後継ぎがいない場合、
廃業というのは最善ではない場合が多いです。

 

後継者もみつけることができ、
売却益も手に入れることができる
M&Aを活用していきましょう。

 

 

あなたや買い手が得するだけでなく、
この自動車業界全体にとってもプラスになります。

 

 

 

弊社では、自動車整備工場、鈑金工場に特化して
経営コンサルティングを行っております。

 

もし、少しでもご興味があれば、
ぜひ一度弊社にご相談ください。

 

 

 

 

 

 

 

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